電子露店 目目

創作品を露店みたいに並べています。よければ見ていってください。

作品分析0207 ヴィンランドサガ

鑑賞した作品のテーマ考察と起承転結の要約と分析。言語化で自己理解を深めたい記事。

(作品のネタバレを含みます。またあくまで感想ではなく分析の書き残しです)

 

□本日の作品:ヴィンランドサガ

URL↓

Amazon.co.jp: ヴィンランド・サガを観る | Prime Video

今期2期放送中の中世北欧を舞台にしたヒューマンドラマアニメ。復習に生きる主人公トルフィンは海賊たちと長い旅をし、世界の血なまぐささと自分の無力さを知っていく。

 

〇作品テーマ:命、生

分かりやすいテーマはなく、複雑で大きな「生」を扱う。そのためにも戦争、略奪といった「死・無力」をつぶさに描く。

 

ネタバレ起承転結(1期)

起:かつて最強の戦士だった男、トールズの息子に生まれたトルフィンは故郷のアイスランドでない、外の世界にあこがれる。父たちの船旅に隠れてついていった結果、道中で出会った海賊たちの人質に。トールズは息子のために命を差し出す。トールズは抵抗せど、決して海賊たちを殺さなかった。

 

承:海賊の親分への復讐のため、海賊たちの後を必死で追うトルフィン。その道中、一人で生きる過酷さと、海賊たちの略奪のむごさをまざまざと身に刻む。

ようやく追いついたトルフィンは親分に復讐の決闘を受けさせるが、相手にならない。ぼこぼこに返り討ちにした後、親分は「褒美に決闘してやる」ことを条件に、トルフィンを小間使いにする。そしてトルフィンは復習相手達との長い旅をはじめ、戦にも加担し、徐々に荒んでいく。

 

転:青年になったトルフィンは親分の権謀術数によって「護衛対象」となったイングランド第二王子の傍使いになることに。親分の秘めたる野望とは、故郷「ウェールズ」の平和を勝ち取ること。そのために第二王子を持ち上げ内政に干渉したいのだが、だんだんと風向きが悪くなり、部下たちからの反乱、イングランド最強の将との死闘を立て続けに乗り越えることに。

 

結:親分、トルフィンともに死に体になるも、なんとか遠征中の帝の御前にたどり着く。しかし、帝が告げたのは「ウェールズ」への侵攻。親分は覚悟を決め、自らが王を殺すことで、ウェールズの平和と第二王子の即位二つの大目的を守った。

その代わり、トルフィンは復習相手を失う。本心は明かさなかったがトールズに敬意を抱いていた親分が最後にトルフィンに残した言葉は「生きろ」。トルフィンはその言葉を持て余すまま、第二王子の計らいで、できる限りの処遇でこのイングランドを離れることになった。(1期終わり)

 

所感:トルフィンの大目的が「復讐」のたった一つで視聴者は感情に寄り添いやすい。そしてその中で、嫌でも「優しく元気な少年トルフィン」は暴力と略奪の世界に加担しなければなくなるので、父の在り方と離れ征く自分への葛藤を味わうことに。

いわゆる感情の導線が強いので、とても見やすい作品だった。

そして要約では省いたが海賊の親分アシュラッドも強い二面性を持つキャラクターで、常に葛藤を内包していることが分かり、視聴者を強い魅力でひきつける。生い立ちもトルフィンに似ているところがあり、頭でも力でも精神でも圧倒的に先を行くアシュラッドが「ラスボス」でありながら「メンター」にもなっていることが物語の要点のコンパクト化につながっているんじゃないかと感じた。

 

対照的に、第二王子は登場からしばらくは「目的のはっきりしない、うじうじした青年」でトルフィンの後背にいたのだが、父代わりの恩人の死をきっかけにした覚醒イベントを経て、「イングランドの先を見据え、野蛮な手もいとわない、精神的に振り切った青年」に変わる。これは「復讐という刹那的目的」と「決闘という形式」にこだわるトルフィンを一瞬で精神的に追い抜く構図で、終盤無力さに打ちひしがれるトルフィンをさらにみじめにする。

とにかく1期はトルフィンが感情の底へと向かう物語なのだが、そのあまりにもみじめで必死な生きざまがあるからこそ、失った故郷の平穏の価値が示される。

総じていえば「序章」で、2期以降人生の底にたどり着いたトルフィンが希望を(きっと)見出していくための「前振り」であった。とはいえ、前振りであっても物語としての一区切りにふさわしい1期の結論は出されている。希望はあるということだ。

トルフィンより先に大義を果たしたアシュラッド、大義を果たす精神を手に入れた第二王子の存在によって、まだ見ぬ希望とやらが、確かにあることを視聴者は知る。悪逆を尽くしたアシュラッドも、その力と頭と精神で一つの彼の人生として「やりきった死」を得られた。だからもう手の汚れたトルフィンと言えど、絶望だけが人生の終わりでないことは示されている。その示しと、2期への期待と不安が1基の物語の締め方だった。

 

「こんだけやって前振りなの!?」というのが視聴者としての第一の感想だ。24話をまったく苦に思わない見やすさと、話しの重厚さの両立はひとえに物語の構図とキャラ配置のうまさにあるのだろう。すごいね。

 

ネタバレ後でも見たい方へ。

URL↓

Amazon.co.jp: ヴィンランド・サガを観る | Prime Video